宮古青年会議所

2010年度の活動

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2010年度 社団法人宮古青年会議所 理事長所信

第 49代理事長 濱元雅浩


郷土の夢を繋ぐのは我々青年の責務である

 まだ戦傷が日本全土を覆い新世界の行方も不透明な時代に「荒廃したまちを自らの手で再建しよう」と青年たちが立ち上がりました。敗戦に狼狽し国の不安を煽る論客を尻目に、また、混乱する政治情勢に飲み込まれることも無く、 颯爽と未来にアプローチする青年たちの清廉な姿が、時代を超えた今も魅力的に思い浮かびます。彼らは夢をひとりだけで語らずに仲間と共に夢を研鑽し、磨き 上げた理想を協働構想として具現化していったことでしょう。その運動は「青年なればこそ、試行錯誤を繰り返すことが許され、勇敢かつ青年にふさわしい方法で活動でき、活動の過程で自ら修練することを許される権利を有する。」という趣意の『青年権』なる言葉を生み、JC理念とと もに各地に波及していきました。

 宮古においても、地域づくりに聡明な理想を掲げた青年たちが宮古青年会議所の同志として歩みを始めてから来年で半世紀の刻みを迎えます。青年独自のアイディアとエ ネルギーを常に地域に提供しつづけ、宮古の発展に功績を記してきた先輩方の志を“百年の足跡”として繋ぐためにも、また、宮古におけるJC運動が今後も“青年の若き情熱から自然発生的に生まれる地域貢献”でありつづけるためにも、私 たち青年が今いちど地域と真摯に向き合い、地域のために率先して汗を流していきましょう。本年の活動理念を「潤い豊かな地域益の創造のために、自ら進んで機会を見出し、柔軟な着想で機会を捉え、 その機会を活かして自信に満ちた地域力を生み出す。」と掲げた私たち宮古青年会議所は、今まさに宮古の夢を掴むための出発点に立っているのです。

自信と誇りの回復こそが地域を創る原動力となる

 毎日、膨大な量の情報が世界を飛び交い、肥大した消費欲が世界経済の循環を支えています。世界経済は、幾度となく崩壊の危機が叫ばれながらも、主要プレイヤーの交代劇をドラスティックな演出で繰り返すことによって拡大しつ づけています。国境やイデオロギーを超えて消費地の確保を目指す強者たちは『世界はひとつ』という平和へのメッセージさえもマーケット拡大のスローガンへ と変え、各地に“豊かさの世界基準モデル”を導入してきました。その潮流の中で、私たちもまた“便利さ・豊富さ”を安定の象徴だと信じて欲求しつづけてき ました。

日本の多くの地方でも、輝きながら膨張する世界基準の生活モデルを求めるにつれ、徐々にメガマーケットのパワーゲームに飲み込まれていき、その結果、潜在的な地域産業の活用や技術継承が希薄となり、産業構造の偏重肥大が顕 著になってきました。加えて、伝統的な地域資源の枯渇などの問題がメガマーケットへの依存を助長し、本来、地域経済の循環軸となるはずの地元企業は力を失 い、地域活性の利益享受者となるはずの地元住民が受益を据え置かれるという事態が発生しています。地方は域内の経済循環バランスを損ない、そのうえメガ マーケットでの浮上シナリオも描けないまま、地域力の低下だけが急速に進んでいるのです。

 そして世紀を跨いで高揚した世界経済が再び過渡期を迎えると、各国は飽和するメガマーケットとの距離を保ちながらも、自国や経済協力域内の需要掘り起こしを目的と した保護的な経済政策の模索も囁き始めました。日本にもその流れに呼応した対応が求められるのだが、すでに90年代にFTA(自由貿易協定)の締結などを活発化させ、サービスや金融の自由化にとどまらず人の移動もオープン化し、労働力の確保や投資ルートの確立を進めてきた諸外国と 世界市場で対峙するには出遅れ感が否めません。また、アジア圏における貿易協定などの主導権も、域内経済循環への影響力に比例して徐々に日本から他国へと 移りつつあります。

 これまで輸出産業で経済を牽引してきた日本は、世界市場の飽和に直面するにつれ金融やエネルギー、食料自給率や少子高齢化などの国内課題に対して「地域経済の再 生・再構築が急務だ!」と論調を強め、地域の自立に向けた多くの地域再生メニューを提示してきました。しかし、画一的なまちづくり計画によってすでに地域 独自の彩りを欠き、自信と誇りを失いかけた地方が本当に必要としている施策かどうかには疑問を抱くところです。私が思い描く地域づくりとは、発展的な地域 力にともなう継続的な地域益を創出するシステムの確立であり、地元プレイヤーが主体性を持って成功例を積み重ねながら、地域に自信と誇りを回復していき連 鎖的に成長していくビジョンの遂行にあります。地域創造を実現するには経験に裏打ちされた自信と誇りの再構築こそが必要なのです。

柔軟に時世を読み堅実に地におろせば穂は実る

 宮古の生活環境は私たちが子供の頃に比べて格段と向上しています。近代化によって社会の復興を推進する時流を素早く捉え、宮古の将来を見据えてインフラの充実に取 り組み、豊かに生きる地域基盤を実現したことは一重にも二重にも先達の功に感謝するばかりであります。まちの近代化で得た安定した物流システムは宮古のあ らゆる産業の発展を下支えし、医療の充実や情報の多様化は住民の生活に潤いをもたらしました。小さな離島である宮古において都市と遜色の無い生活環境を獲 得したことで、住民たちは地域に誇りを持ち、自信に満ちたまちは更に熱気を帯びて拡大してきました。

しかし経済の発展は地域に多大なメリットを提供する反面、欲求を増大させながら伝統的な地域社会システムを蝕む側面をも持ち、ひとたびバランスを失うと地域循環を塞き止める危うさを内包しています。自由競争を市場原理とす る資本主義経済下で欲求の肥大が生じることは必然である以上、広告戦略やマーケット戦略に長けた強者が消費者ニーズを背景に地域市場を優位に渡り歩くこと も容易となるのです。その状況下で地域経済を健全に保つには私たち地場企業が提案力を高めて、地域ニーズを捉えつつも更に進歩的・発展的なサービス提供で ユーザーを先導していき、獲得した信頼で新たなニーズを創っていくという基礎的な営業戦略に立ち返らなければなりません。

現在、宮古の産業構造はサトウキビを中心とした第一次産業と観光関連の第三次産業が経済を牽引しています。伝統と新興の産業が両輪をなす理想的な構造に見えつつも、将来ビジョンにおいては両者ともに不安材料を抱えているこ とは否めません。国が進めるFTAの動向は中心農産物であるサトウキビの価格を直撃しかねず、観光集客においても環境資源の保護を加速させながら同時に新規の観光資源開発が求められています。また、長きに渡り宮古経済を牽引してきた建築業は、公共事業の削 減や利益率の減少から大きく後退を余儀なくされ、再起にはもう少し時間を要する公算が支配的です。

このように目まぐるしく社会が変容する現在、私たち青年に求められることは流浪する時世をしっかりと捉えて、相互扶助(自発的な協同)による新しい地域の力を自分たちの手で構築することにあります。今こそ私たち宮古青年会 議所に託された青年権の行使をもって、まずは小規模であっても連鎖的な地域の営みを芽吹かせ、地域ぐるみで風雨に堪えうる地域力へと育み、豊かな実りとして地域に還元していく地域振興の宮古モデルを共に実践していきましょう。 

環境施策への特化こそが宮古を元気なまちにする

私は宮古の地域づくりの鍵は環境関連産業の充実にこそあると考えています。すでに環境モデル都市として宮古島市が取り組んでいる“エコアイランド構想”の積極的な推進を軸に、国の提唱する“低炭素社会の実現”を先進的に牽 引していくことで、宮古の経済は新たな発展に推移していくと確信しています。宮古は人口規模や地理的条件に優位性を持つうえ、地場の伝統産業と環境関連産 業が連動しうる特性を持っており、自然環境保護の積極推進や伝統産業と調和のとれた環境関連ビジネスの確立をもって低炭素社会・循環型社会の実証モデル地 域として高いパフォーマンスを発揮できると感じています。

 先行するバイオエタノール事業は継続的なサトウキビ生産を支えうる規模までの拡大を地域全体で目指していき、世界的に水産資源の枯渇が取り沙汰される漁業において も、海草からのエタノール抽出の研究と連携した新分野開拓を急ぎ、宮古上布の継承発展とリンクさせて苧麻からの油分抽出を検証することも有益な取り組みだ と考えます。また、景勝地や観光拠点で風力や太陽光といった再生可能エネルギーを利用した充電設備を整備していき、観光やレジャーに電気自動車や電動バイ クの活用を促進することも、化石燃料に全面依存しないエネルギー自活のモデル地域として世界から注目を集めることでしょう。更には蓄電技術の向上に地域全 体で協力していくプランも有用となるでしょう。

 加えて、エコロジカルな取り組みが生活基盤の強化と連鎖することで、更に有効な地域振興策へと発展していくと考えています。ついては住民生活へ再生可能エネルギー の生産と利用を推奨するうえで、中心市街地をエコライフの先進モデルとして再構築する施策を打ち出すことが望まれます。中心市街地のエコタウン化は衰退傾 向にある商店街の再起策と連動しながら、観光資源の増幅や住民生活の潤いづくりに貢献できるでしょうし、エコアイランドの顔として宮古の魅力を広く伝える ツールとなると考えられます。また、地域のエコ化に向けては風土に合った伝統的なまちづくりにも再度アプローチすることで、宮古の特色に満ちたエコアイラ ンドが創造できるでしょう。

 エネルギー、水、食料の安定確保や廃棄物処理のシステムなど世界中が環境リスクに敏感な時世だからこそ、地場産業と環境保全ビジョンの連携を前面に環境施策にア プローチすることで、地域の理解と産官学の協働、地域間・世代間の協調による実行プランが可能となり、その成功イメージを地域全体で共有できれば、宮古か ら世界に発信できる循環型エコアイランドの確立が成し遂げられると私は信じています。蛇足ですが、エコアイランドの実現とは自然との共生が大前提にあり、 テクノロジーの集積に偏ることなく既存の自然環境の保全と更なる整備が不可欠です。私は緑の拡大を目的とした林業分野の事業創造もエコアイランド実現の課 題として提唱していきます。

まちを支える人材は地域ぐるみの実践教育で育もう

 地域活性の担い手となる人材づくりには多種多様な育成論が存在しますが、実際に必要な能力というのは時代や社会背景によって大きく左右されるため“万全の育成術” は存在し得ません。一転飛躍すれば、青年の責任と勇気で既成概念を超えていければ、地域性に富んだ独自の発想や意見を育成手法に反映させることが可能な活 動でもあるのです。ついては青年の確かな歩みで宮古の新たな地域力づくりを目指す私たち自身が、宮古青年会議所の活動を通して、地域益に適う実践プランを 細かく積み上げて地域に明示し、地域を巻き込みながら実行していける人間力を研鑽していき、同時に地域の核となる人材の連なりを共に生み育てていきましょう。

 私たちが生活する実社会は混沌と流れていて、ルールやマナーを除けば学力テストに存在するような正解や不正解という明快な解答はほとんど存在しません。答えが無い からこそ未来を独自に想像することが可能であり、その目標に向かって紆余曲折する余地を社会が有してきました。しかし近年は世界基準の強大化と拡散に押さ れて、地域社会の持つ“成功するための不成功を許容する余白”が目減りしているように感じています。将来の宮古の浮上には、混沌のなかで自ら先導して地域 の未来を照らす光となり、地域色に富んだ実践モデルの協働連鎖を育む勇敢なチャレンジが必要となります。そのためも柔軟な発想と強固な意志を持った起業家 精神の育成が急がれると考えています。

 私はこのような育成のチャンスが特権化されることを喜びません。起業家精神の育成は座学より社会実践からの学びに比重を置くため、地域全体に門戸が開かれ誰でもが 学ぶ機会を得られていることで初めて地域の理解と学びの場が得られるのです。そのうえ機会の平等は連帯からくる相互理解を促進させ、自発的な協働を容易に 運ぶことも叶えます。起業家精神の育成を地域連携として継続発展させるためは、キャリア教育を公教育へ積極導入をすることも有効です。先進する教育モデル を精査して宮古独自の育成施策を獲得できれば、子供たちは学力に偏らない“生きる力”を自ずと獲得できるでしょうし、地域の営みを身近に感じて育った地域 の宝は、たくさんの経験を自信に変え地域の輝きとなることでしょう。

 加えて専門的な技術者育成の場も重要となります。例えば各分野で高い評価を得ている宮古の技術系高等学校をひとつの高等専修学校へと改変して高度な専門教育を提供 できれば、知識と技術の獲得で自信を着けた学生たちが先進的な農商工の横の繋がりを強固とし、原料生産から加工・販売までを各専門性において担当する若き 協働起業モデルの実現などが期待できますし、また社会人向け講座の充実により地域益への直結も促進されると考えます。専門技術の獲得は自信と誇りを得る最 善の策であり延いては地域づくりの起爆剤となり得ます。ひとづくりは決して一朝一夕ではいかない活動だからこそ、今後とも宮古青年会議所が旗手として邁進 していきましょう。

住民の夢の結晶が地域づくりを支える原動力となる

 近年、日本は総人口が減少に転じたうえ超高齢社会の到来をも迎え、それに伴う社会運営システムの再整備が求められる時代へと突入しました。高齢率の急速な上昇は社会ニーズの変化を生み、これまでの慣例的な施策では有効性に 乏しい、または道理を欠くということもあらゆる場面が増えてくると考えられます。さらに国と地方の関係においても、税源移譲や道州制の導入をはじめとする 構造再編論が活発化しています。権限の移管により住民が主体的に地域づくりへ関与できることを期待できる反面、もしも受益者負担の原理を前面に議論が進む と、基盤整備や財源確保に対する住民リスクも増大していき、地域発展の足かせとなる可能性も含んでいます。

つまり、今後はあらゆる事業においてしっかりと住民ニーズへアプローチできているかどうかが重要となります。その作業をスムースに展開していけるかは地域協働システムの有無に掛かっていると考えています。地域課題の抽出か ら各視点でのアイディア出し、方針決定からプログラム実施まで多くの住民が関与してく過程で、地域ビジョンを共有できた住民全体が事業のスムースな展開を 加速されていきます。このように住民が主体性を持ち自発的に社会参画できる【島ぐるみ協働運動】を宮古青年会議所は推進していきます。例えば広域連絡会や 住民自治の検討会などを通して地域課題を抽出し、宮古全域で情報を共有できる手法を検討しながら協働運動の実行プランを表明していき、地域住民が主力プレ イヤーとなって地域益の循環を支えていく協働社会づくりを目指すのも可能でしょう。

地域課題の検証システムとして市民討議会の活用も非常に有効だと私は感じています。市民討議会は一般住民の社会参画を容易にするシステムであり、地域の力を掘り起こして一点集中させるのに適した取り組みなのです。裁判員制 度への市民参加を見ても、現在、住民の地域貢献ニーズが高まっていると感じられ、このパワーを地域自治や地域づくりに活かすことが望まれます。近年増えて いる地域ブランド商品などは、住民の地域貢献ニーズを協働発信というスタイルに変えて広告媒体として組み込むことで事業発展させています。このように地域 盛衰の鍵は住民の潜在的な力の活用にあると私は考えます。

 住民の社会参画を実現するには情報メディアの働きが重要になってきます。地域課題に対しての良質な情報を共有することで多くの発想を生み、本質的な住民受益への意 見集約に繋がっていくのです。多くの情報メディアがより提言型にシフトすることで、住民のメディアリテラシーを向上させることにも繋がると感じています。 地域の声を集約して潜在的に宮古の持つ優位性を反映させた地域活性イメージを【島ぐるみ協働運動】として具現化に向けていくことで、住民の夢を集積した揺 るぎない地域づくりが可能となるのです。宮古青年会議所は郷土の伝統や営みを地域住民と共に守り育むために、今一度、地域の彩りを見つめ地域の心を繋いで いかなければならないのです。

宮古青年会議所が地域の力を信じて新時代を開拓する

 理論物理学者のアルベルト・アインシュタインは「想像力は知識よりも大切だ。知識には限界があるが、想像力は世界を包む」という言葉を残しています。私たち宮古青年会議所は私たち自身の持つ無限の想像力を信じて、あらゆる 視点から地域益にかなうアイディアを持ち寄り、地域づくりの核となる生活基盤の将来ビジョン策定を積極的に推進し、自ら進んで主体的な実行者として尽力し ていきます。半世紀にわたり受け継がれてきた宮古青年会議所の志をここに結集して、宮古の抱えるあらゆる課題に真摯に向き合い汗を流すことで、自信に裏打 ちされた強固な地域力を手にすることができ、そこで生まれた地域益を有効に地域循環させることができれば、宮古全体が誇りに満ち更なる活性に邁進していく と私は確信しています。

今日を昨日の続きとして迎えるだけでなく、明日を創るための今日と捉 えて歩んでいくことで日々は充実していきます。私は継続事業として宮古青年会議所が担ってきた取り組みに対しても、より良く次代に繋ぐために大いに語らい 深みに挑戦することを望んでいきます。「いま宮古にどれだけの夢が芽生えているだろうか? そして、夢の実現のためにどれだけの汗が流されているだろう か?」このことを私たちの基軸として共有し、宮古青年会議所の一員として活動することに自信と誇りを持ち、今後も宮古の社会成熟を担う実行者として地域づ くりを牽引していきましょう。私たちの歩みの先にこそ宮古の夢の実りがあると私は高らかに謳います。

 2010年度 基本方針:

  • 新たな離島地域産業の検証と実践モデルづくり
  • 環境保全と産業振興のバランスの取れた地域モデルの確立
  • 地域活性を支える人材育成のシステムづくり
  • 地域住民が主体性を持って地域課題に取り組める環境の整備

 2010年度 スローガン:

  • 新たな地域 の創造者として、傍観から脱却し主体的な実行者たらん。

 2010年度 活動理念:

  • 潤い豊かな 地域益の創造のために、自ら進んで 機会を見出し、柔軟な着想で機会を捉え、
    その機会を 活かして自信に満ちた地域力を生み出す。